平成26年度大阪府がん対策推進委員会報告
報告者 渡邉美紀 山本ゆき
日時:平成27年3月27日 15:00~17:00
場所:ホテルプリムローズ大阪 2階 鳳凰(東)の間
出席者:
◎座長 松浦 成昭
(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター 総長)
伊藤ヒロコ(公益社団法人大阪府看護協会 会長)
河 敬世 (日本赤十字社近畿ブロック血液センター 所長)
後藤 太平 (大阪府議会健康福祉常任委員)
中山 富雄 (地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター
がん予防情報センター疫学予防課長)
馬場 武彦 (一般社団法人大阪府私立病院協会 副会長)
林 紀夫 (独立行政法人労働者健康福祉機構関西ろうさい病院長)
宮代 勲 (地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター
がん予防情報センター企画調査課長 兼 消化器外科副部長)
村上 公美 (四條畷市健康福祉部 上席主幹(保健センター担当))
山崎 秀男 (公益財団法人大阪府保健医療財団 大阪がん循環器病予防センター
副所長)
山本 ゆき (山本孝史のいのちのバトン 代表)
和田 信 (地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター
心療・緩和科部長)
渡邉 美紀 (乳がん患者・家族の会「のぞみの会」 代表)
議題: ①各部会の活動状況の報告 ②第二期大阪府がん対策推進計画の取組状況について ③大阪がん患者団体協議会の紹介
I. 質問、要望
1.検診部会
精密検査率が国の許容値を下回る市町村に部会として通知文を発送している。大腸がん(許容値70%)で許容値を下回っている市町村が14とダントツに多い。他のがんと同様に通知文を発送するだけでいいのでしょうか。
⇒今回、通知を出したので市町村がしっかりと取り組んでくれると思う。
特に悪い市町村には、私(中山部会長)が出向き状況を把握し、問題点を改善できるようにしていきたい。
2.肝炎肝がん対策部会
大阪肝臓友の会からの質問と要望を伝えた。
(1)質問
個別勧奨の実施状況が市町村間で格差がある。実施できていない市町村への
働きかけはどうするのか。
(2)要望
①市町村での肝炎ウイルス検診の個別勧奨を27年度に強化してほしい。
⇒ウイルス検診は一生に1回でいいので、個別勧奨は難しい。
②肝炎ウイルス陽性者に対する国のフォローアップ事業にならい、府も初回 精密検診(血液検査と画像検査)について、その費用を助成し、低所得者の定期
検査(血液検査・画像検査)も実施してほしい。ウイルス陽性者に対する個別勧奨の更なる充実(近畿では実施率が最低の44%)をお願いしたい。
⇒治療法が変わり、非インターフェロン治療で完治する時代となった。費用助成
は効果が未知数だ。新しい感染をどうやって防いでいくのかが課題。母子感染は防げるようになった。キャリアであることを知らない人も多い。
③「肝疾患相談支援センター」の周知のお願い。肝疾患診療連携拠点病院(5大学病院)では、外来窓口やホームページ上にセンターの所在を明示してほしい。⇒それはその通りだ。
④「健康手帳」(肝炎手帳)の改訂版の作成と配布をお願いしたい。
⇒7月に日本肝臓学会の治療ガイドラインが改正されてからの話だ。
3.がん診療連携拠点病院部会
(1)敷地内禁煙について
前年度に敷地内禁煙ができていない病院があったがその後どうなったかの質問と指定要件に入れて義務化をお願いした。
⇒国が、敷地内禁煙は「望ましい」という表現を使っているので、それに沿っている。大阪独自で義務化を打ち出してもいいかもしれないが・・・。国拠点で敷地内禁煙ができていなかった1施設あったが今はできている。敷地内禁煙ができていなかった府の6病院のうち3病院も全面禁煙になった。残すところ3施設となっている。
(2)府拠点病院の新指定要件について
1年の経過措置で指定が更新となった病院が28もある。部会では、1年後に指定要件を満たせない病院がたくさん出てくるのでは、と心配する意見もあったが、「要件を満たさない場合は指定を取り消すということ」、と府が部会で断言された。その線で頑張ってもらいたい。患者側委員の報告によると、緩和と相談支援の要件を満たしていない病院が多いということだった。その分野での充実が必要となってくる。
⇒人的要件のみ満たさない場合は2年の指定更新。人的要件の他にも満たさない要件がある場合は1年の更新。厳しいが何とか頑張ってくれるだろう。
4.緩和ケア推進部会
(1)緩和ケア
指定要件に「入院時における緩和ケア提供の資料配布」とあるが、診断時も資 料配布が必要ではないか。府がリーフレットを作成した。拠点病院で患者さんの目につく所に置いてもらうよう依頼したという事だったが、診断時に手渡してほしいと要望した。
(2)在宅
在宅へと患者を誘導したい国の方針と現実のギャップがはなはだしい。患者は、行先も決まらないうちに退院させられ、家族が直接、地域連携室に電話をして相談を試みたが、相談にのってもらえなかったというケースも聞く。
以下の在宅への移行時の新要件が守られることを期待する。
①がん疼痛等の症状が十分に緩和された状態での退院に務め、院内での緩和ケアに関する治療が在宅診療でも継続して実施できる体制の整備
②在宅での診療計画を作成する。
③療養場所の決定では、主治医、緩和ケアチームも連携する。必要に応じて在宅医や訪問看護師などと退院前カンファレンスを実施する。
患者も不安が多く在宅に踏み切れないでいる。在宅とはどういうものかということを、府、病院側、患者サイドが連携して知らせる必要があるのではないか。在宅マップ作成は3医療圏で行われているとのこと、他医療圏にも広がっていけばいい。
⇒一般社団法人大阪府訪問看護ステーション協会(会員数は470を越える)が昨年4月に設立され、取り組みが進んできている。医師会との連携が必要。今が、過渡期で大変な時期。少しずつ、改善されていくはず。研修会も行っている。医療制度上の問題が大きい。緩和医療のドクターを見つけるのが大変。マップが他の医療圏にも広まって行くことを期待する。
5.患者支援検討部会
(1)アンケートの活用
相談支援センターのアンケートをやりっぱなしにしないで患者会などと連携して意見交換会等をするのがよいのでは。⇒連携をとってやっていきたい。
(2)相談支援センター
どこにあるのか分かりにくい病院がある。院内の奥まった場所ではなく患者がよくわかるような場所に設置してほしい。玄関にその表示と誰か窓口にいるようにしてほしい。⇒委員会として現地調査に行くことも考える。
(3)就労
患者支援部会で「離職防止支援・復職支援」を打ち出していた。患者にとっては非常に心強い。また、「早まって仕事を辞めてしまわないで」と医師から言ってほしい。「治療には費用がかかる」ということも。⇒就労に関してはいろいろな機関と連携して取り組んでいる。
6.小児がん部会
府立高校生への講師派遣制度の周知を徹底してほしい。希望としては府立だけではなく、市立、私立高校にもその制度が活用できたらいい。
⇒医療者間でも認知度が低すぎる。患者側の三浦委員から指摘をうけた。しっかり周知させたい。
7.がん登録部会
「がん登録法」が制定され、28年1月1日から施行される。27年度は国民への周知の年だと思うが、単に、施行されますではなく、どういう法律なのか内容も国民・府民に知らせてほしい。
がんになった患者は、例え、多府県に転居しようとも、言葉は悪いが、最後まで追跡され、その人のがん情報が国に報告される。がん患者は多岐にわたる不安を抱えている。その上に、自分の知られたくないことも国に報告されるのではないかと不安が増えることのないようにお願いしたい。
⇒医師の間でもがん登録の理解が進んでいない。国民・府民に個人情報の保護などで不安を持たれないようにする必要がある。
8.その他
遺伝子乳がん患者の遺伝子検査や検診制度、卵巣、子宮摘出手術など保険適用外の高額な費用などに対して対応を大阪府で要望しても無理なことはわかっているが皆さんに知ってほしい。
II. がん患者団体協議会の紹介
10分の時間をいただき、世話人で作成したスライドを用いて協議会の紹介をした。松浦座長から、今後も、府、医療者、患者会の連携を取っていきたいとのコメントがあった。
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【傍聴の感想】西村慎太郎さん(大阪肝臓友の会)
推進委員会での質疑応答を聞いていた。肝炎ウイルス検診について市町村による個別勧奨をもとめたところ、「できない」との回答でしたが、兵庫県では先に行われた県肝炎対策推進協議会において、2015年度には、政令市も含め全ての市町村で取り組まれることになったと報告されていました。その違いは何処にあるのでしょうか。