平成28年度第1回患者支援検討部会報告

(開催日) 平成29年1月31日                (報告者)三木祥男(口腔・咽頭がん患者会)

傍聴者:4名

 

報告事項 「がん対策基本法 改正について」
議題
 「第二期大阪府がん対策推進計画の取組み状況について」(事務局)
 「その他」

 患者委員の立場から申し上げた意見のみ記載します。
1.資料1「がん対策基本法改正について」に関して,注目点や関心事項を述べた。
 ①目的規定(第1条)の中の「その状況に応じて」とあるのは,ライフ

  ステージ(AYA世代,働く世代,高齢者)やがんの特性(難治性が 

  ん,希少がん)など,細かな状況に注目するということであり,患者

  としてありがたい。
 ②基本理念の追加項目の中の「がん患者の尊厳の保持」というのは,患

  者が自分らしく有意義に生きることを意味していると解釈している。

  「安心して暮らすことのできる社会の構築を目指す」という文言は,

  そが最終目標であることを宣言したものと解釈した。
 ③「有機的な連携」「総合的に」「相互の密接な連携」という言葉が出

  て来るが,これは今まで関係者間の連携・協力関係が不十分だったこ

  とへの反省である。今後は重視すべきことを示すものである。
2.資料2「第二期大阪府がん対策推進計画の取組み状況について」(事務局報告)に関する意見

 ① 第2期計画では,「がん診療連携協議会は患者団体等の意見を踏ま

  え・・・」とあるが,がん診療連携協議会と患者団体の意見交換の機

  会はなかった点を指摘した。
 ② 第2期計画では,「医師・・・,相談員等がんにかかわるすべての人

  ががん患者のこころのケアに配慮した行動がとれるように人材育成に

  努める」とある。研修会で効果があればありがたい。しかし臨床現場

  では使われないということもあるようなので,留意願いたい。
 ③ 1年前の「地域相談支援フォーラム」は非常に良かった。そのときの

  発表会で得られたものをがん対策に反映できたか?議事録には多くの

  ヒントやアイデアが出ているので,来期に反映してほしい。
 ④ 「がんサポートブック(別冊)」を相談支援センターで利用するとき

  には,患者に手渡すだけでは意味がない。相談員の研修会で有効な活

  用法を検討してほしい。
 ⑤ 就労問題について。支援のためのガイドラインの内容はよく出来てい

  るが,大阪府は配布しただけではないのか?今後実態調査をやって,

  大阪府固有の問題点を明確化してほしい。またがん患者団体協議会に

  はWorker and Cancerという働く人たちのための患者会が加盟した。

  こうした患者会との連携も検討してほしい。これらを来期への引き継

  ぎ事項としてほしい。
 ⑥ がん基金について。活用範囲が広いので非常に重要視している。しか

  し募金方法に問題がある。ふるさと納税方式だと,確定申告をしない

  人や納税義務のない人は募金できない。また手続きも複雑なのでWEB

  で振り込めるように簡素化した方が良い。また使途は島根県では医療

  機器の購入のために6億円集めたという事例があるが,啓発・教育分

  野だけでなく,心のケア対策の研究や難治性がん・希少がんなどへの

  研究支援も考えるべきである。「がん基金の制度の再設計」を来期へ

  の申し送り事項にしてほしい。


3.その他
 ① がん患者団体協議会の会員から,「各相談新センターでは,希少がん

  患者からの相談を受けていると思うので,その相談内容。年間件数,

  悩み,対応の苦労などを知りたい」との要望があった。これは希少が

  んに限らないことので,相談支援センターで受け付けた情報や相談員

  から患者に提供した情報をがん種別に記録してデータベース化できな

  いか?
 ② 4月からの29年度計画と第3期計画の策定に当たって2点要望した

  い。
  (ア) 29年度計画に盛り込んでほしいこと。従来は医療中心の対策で

    あった。つまり病院で出来る範囲の対策であった。しかしこれで

    はがん患者の心のケアには不十分である。患者会は緩和医療とは

    本質的に異なる効果があるので,来期計画ではがん患者会や院内

    サロンの普及を最優先で取り組んでほしい。
  (イ) 第3期計画に反映させてほしいこと。時代の流れは,がん患者の

    自分らしい生き方を尊重する方向に向かっている。この「時代の

    流れ」を第3期計画に反映させてほしい。
 ③ これらも来期への申し送り事項としていただきたい。

 

4.感想
 今回から初めて取組み成果報告書に「自己評価」欄が設けられた。それは取組みテーマとして掲げた施策の達成度に対する事務局(大阪府)の自己評価である。それに対して部会としての評価点も付けることになっている。他の部会でもそうであるが,すべての取組みがオールAで,委員会評価も全く同じである。
 こうした評価は「無い」よりも「有った」方が良いが,問題も感じる。 以下に感想を述べておく。
 ① 取り組んだテーマは,確かに事務局や関係者の努力で,曲がりなりに

  も実施されて来た。しかし問題は,取組みテーマがこれで良かったの

  かいう本質的問題を感じる。
 ② もう後の祭りであるが,第2期計画を策定するときに十分検討した施

  策なのかという感じがする。一旦決めた施策を忠実に達成すべく,こ

  の4年間努力したことは,認めざるを得ない。だからオールAで文句は

  言えない。
 ③ たとえば現在の患者支援検討部会の取組み施策は,「情報提供・相談

  支援」と「がん対策の新たな試み」(内訳は「就労支援」「がん基

  金」「患者・家族との意見交換」)である。しかし長期的展望に立て

  ば,少なくともがん患者のニーズや実態調査など,今後の施策に必要

  な情報収集をしておくべきであった。第2期計画前と終了後の変化は

  特に重要である。世間では,静岡がんセンターのように数千人のがん

  患者の悩みの内容がこの10年間でどう変わったかを計画的に調査し

  た事例もある。自分自身患者委員としては,忸怩たる思いがある。
 ④ ここから学ぶべきことは,第3期計画の策定に対して,十分な議論と

  検討を加えないといけないという反省である。第3期計画では,同じ

  轍を踏まないようにしたいと思う。
 ⑤ 今回の評価では,実施した中身がどんなものであろうと,やれば

  100点と評価されている。例えば相談員研修をしたら,どんな問題

  が浮き彫りになり,どんな対策を取るべきかを抽出し,対策を取った

  のか否か,その成果はどうだったのか,そこ迄やったとき100点と

  すべきであろう。検診部会では精度管理センターがそうした活動を行

  い,精検受診率の成果を上げたことが報告されたが,その時が100

  点であろう。緩和ケア部会では,委員からそうした評価になっていな

  い点の批判が出たが,その意味で今回の評価の意義はあまり高くな

  い。
 ⑥ むしろ必要なのは,この部会自体ががん患者から感謝されるような成

  果を上げたかどうかが問われるべきであろう。多くの人は,「方法が

  ない」と言うかも知れない。精度は悪くても,傍聴者に評価しても

  らったらいい。そうした評価が行われるとなれば,部会も委員も緊張

  した真剣な議論をするだろうし,府民や患者団体も強い関心をもって

  傍聴に来るだろう。これこそ部会としての自己評価であろう。「テー

  マ達成度」の評価と「部会の有効度」の評価を並べたら良いと思う。